ちょっと怖いけど面白い。結末を知っていても何度も読みたくなる絵本のご紹介です。
書名 :パンぼうや
作 :マーシャ・ブラウン
訳 :おがわ きよし
出版社 :童話館
対象年齢:3~4歳
対象年齢は3~4歳。繰り返しによる安心感は欲しいけど、それだけでは物足りない、そんな年齢の子供にぴったりの絵本です。
パンぼうや ロシアのむかしばなし [ マーシャ・ブラウン ] 価格:1,650円 |
絵本の内容
- ロシアの昔話。
- 繰り返しによる効果を楽しむ。
- 衝撃のラスト、意外性を楽しむ。
<あらすじ>
おじいさんがおばあさんにパンを焼いてくれ、と頼む場面から物語が始まります。おばあさんは粉をかき集めて苦労してパンを作りますが、パンは突然人格(?)をもち、家の外へ飛び出してしまいました。必死で追いかけるおじいさん、おばあさんとは対照的に、余裕の表情で逃げ出すパンぼうや。その後も次々と自分を狙う動物たちから、パンぼうやはするりと身をかわして逃げていきます。次第に調子に乗って不遜になっていくパンぼうやでしたが…
子供の反応
年少さんの時に鑑賞しています。
衝撃のラストを受けて、口を開けてポカンとしていました(笑)。現実に引き戻されると、驚きと”なんだかよくわからないけど面白かった!”という目で「もっかいよんで!」といわれ、何度も読んだ絵本。親が暗記しそうなほど読んだ絵本の一つです。
物語の面白さ ポイントは3つ
この物語の面白さ、中毒性は一体なんだろう…と考えたのですが、それは物語の展開に安心感、期待感があったことに加え、意外性があったことにポイントがあると考えています。
- 安心感:繰り返しによって幼い子供でも次の展開が予想でき、実際予想どおりになる。
- 期待感:繰り返しに変化があることで、幼い子供でも物語の転換点がわかりやすい。
- 意外性:衝撃のラスト。結末のあっけなさ。
安心感:繰り返しによって幼い子供でも次の展開が予想でき、実際予想どおりになる。
この物語では、パンぼうやとパンぼうやを狙う動物たちの、似たようなやり取りが何度も繰り返されます。
パンぼうやを狙う動物は、ウサギ、オオカミ、クマ、そしてキツネ。「パンぼうやをたべるぞ!」と宣言した動物たちを、パンぼうやは馬鹿にしながら逃げていきます。この繰り返しです。
特に、自分がだれから逃げてきたのか(いかに凄いか)、をパンぼうやが自慢げに歌うシーンは、読み手がうんざりするほど。パンぼうやの歌の歌詞は途中まで全く同じ。逃げ切るごとに誰から逃げたというのが追加され、歌詞はどんどん長くなります。
(歌詞は1ページを使うボリューム!長いんです。これが何回も繰り返されます…)
同じ展開、同じ文章(歌)が繰り返されることで、幼い子供でも次の展開が予想でき、実際に予想どおり「いつもの」展開となります。安定した繰り返しに子供は安心感をもってお話に耳を傾けることができます。
期待感:繰り返しに変化があることで、幼い子供でも物語の転換点がわかりやすい。
けれども年少さんにもなると、ただ繰り返されるだけの物語では物足りなく感じるもの。安定した繰り返しによる安心感は欲しいものの、それだけでは面白くありません。この問題を解決してくれるのが、キツネの登場シーンです。
キツネは他の動物たちのように「たべるぞ!」とは言いません。それどころか生意気なパンぼうやを「すてきだ」と褒めちぎるのです。なんだか怪しい雰囲気ですね。
子供もここで「おや?なんかこれまでと違うな」と気づくようで身を乗り出してきます。子供がそれを良いほうにとらえているのか、悪いほうにとらえているのかまではわかりませんが、繰り返しがくずれたことで物語が大きく変わったことに気がつき、これまでとは違うことが起きるだろうと期待します。
さてドキドキしながら結末を待つわけですが、キツネとのやり取りだけ長く、結末を焦らされます。うまくできていますね~。焦らされる間に読者の期待は高まります。
そして良くも悪くも期待どおり、これまでと異なる結末を迎えるのですが…
意外性:衝撃のラスト。結末のあっけなさ。
結末を焦らされたにも関わらず、物語はたったの一言で、あっけなく終わります。
いったい何がおきたのか?はじめて聞いたこどもは事態が読み込めず、ポカンとなります。きっとパンぼうやもわからないままだったでしょう。大人でもこの急な終わり方に不意をつかれ驚きます。
そして感情を始末できないままポカンとしている間に「おはなしは、これでおしまい」と続き、これまた急に一気に現実世界にひきもどされます。
この終わり方はとても潔く印象的です。さらに余韻に浸る暇を与えずに現実に引き戻されるので、「もう一回読みたい!」と思ってしまうのでしょうね。うまくできたラストです。
この本に興味をもったら この本もオススメ
書名 :三びきやぎのがらがらどん
作 :マーシャ・ブラウン
訳 :せた ていじ
出版社 :福音館書店
対象年齢:4歳~
三びきのやぎのがらがらどん ノルウェーの昔話 (世界傑作絵本シリーズ) [ マーシャ・ブラウン ] 価格:1,320円 |
作者は「パンぼうや」と同じマーシャ・ブラウンです。力強いタッチで迫力がありながらユーモラスなヤギが描かれています。我が子はこの本がとても気に入って、橋を渡るたびにヤギ役を演じ楽しんでいました(親はトロル役)。